健康が脅かされる原因は、個人ではなく社会にある
生涯健康でいられるための技術を身につけるには、
子ども達を育てる保護者に向けて、
子ども向けの健康教育の仕方を伝えられたらいいのではないか?
と考えるようになりました。
何を伝えたら良いのかを知るために、勉強し始めたのが「健康格差」です。
例えば、高血圧や糖尿病などを抱える貧しい人たち。やっと手に入れた給料を、
お酒やタバコ、ギャンブルに使ってしまう。
その結果、病気はさらに悪化して、貧困も深刻になっていく。
このことについて、責任は誰にあるのでしょうか?
不摂生な生活を送っていた患者本人の責任か、
貧困に陥ってしまったことに原因があるのか。
この「健康の不平等」について解説するのが、
『健康格差 不病棟な世界への挑戦』です。
- 作者: マイケル・マーモット, ,栗林寛幸監訳,野田浩夫訳者代表
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2017/08/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者のマイケル・マーモット氏はロンドン大学の疫学・公衆衛生学の教授。
WHOの「健康の社会的決定要因委員会」の委員長を務め、
2014年に発表した『社会的決定要因と健康格差に関する欧州報告』は
多くの国や地域で採用されています。
2000年にはエリザベス女王から「Knight」の称号を授与しています。
著書は、人々が健康を損ねる原因は、自分自身に起こる出来事を制御不能にしている
様々な社会的な要因だと指摘しています。
先ほど登場した人が、せっかくのお金を病院への受診や健康的な食事などに
使わないのは、「彼(彼女)が周囲の人よりも貧しい(相対的貧困)」状態が、
将来の計画を立てたり、自分の行動をコントロールしたりする力
「エンパワーメント」を衰えさせていることが原因です。
相対的貧困がエンパワーメントを弱らせる力は、
なんと、一晩徹夜したときと同じくらいだそうです。
このように、自分の行動をコントロールできない状態を「無力化」と言います。
無力化された人に病気になったことへの個人的責任を問うことはできないと、
著書の中でマイケル氏は主張しています。
「無力化」を引き起こす社会的な要因を「健康の社会的決定要因(SDH)」と言います。
SDHは、お金がないなどの「物質的」、仕事の裁量権が自分にないなどの「心理的」、
国や団体などに自分の意見を発言できない「政治的」の3種類に分類されます。
どのようなSDHによって健康が脅かされているのかを考えることが、
健康の不平等に立ち向かうときに重要になってきます。
3つのSDH。子ども達に伝えるものを考えるヒントになりそうです。
じつはまだ、3章までしか読み終わっていませんが、
図書館の返却期限がきてしまいました。
なんとかもう一度借りて、4章以降もご紹介します!
- 作者: マイケル・マーモット, ,栗林寛幸監訳,野田浩夫訳者代表
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